整備士ノート510です。
この記事を見ている方は、車屋さんから「ガスケット抜けかも?」と言われていたり、オーバーヒートをしてガスケットが抜けているか心配している状態だったりするかもしれませんね。
今回はそんな方に向けて「ヘッドガスケット抜け」について解説します。
- オーバーヒートをしたがヘッドガスケット抜けのチェック方法は?
- ヘッドガスケット抜けって何?
- 修理するといくら位かかるの?
そんな疑問に答えていきます。
ヘッドガスケット抜けとは
ヘッドガスケットの役割
まずはヘッドガスケットの役割を説明しますね。役割としては主に以下の2つがあります。
- シリンダー内部の圧縮を漏らさない
- 冷却水・オイルをシールする
シリンダーヘッドとシリンダーブロックの間にあるガスケットが、シリンダーヘッドガスケットです。
画像引用:ウィキペディア
ヘッドガスケットは特殊加工された材質の違う金属を何枚か重ねて作ったメタルガスケットが主流で、圧縮をシールする大切な役割があります。
このガスケットに不具合が起こると、圧縮漏れや冷却水漏れ、オイル漏れなどになってしまいます。
この症状のことを通常「ヘッドガスケット抜け」と言います。
ガスケットが抜ける原因
ではこのヘッドガスケットが抜ける原因は何でしょう?
それは、経年劣化によるヘッドガスケット自体の不良や、オーバーヒートによるシリンダーブロック、シリンダーヘッドの合せ面のひずみが原因だったりします。
そのまま走行するとどうなる?
では、ヘッドガスジェットが抜けている状態で走行すると、どうなるのでしょうか?
ヘッドガスケットが抜けている状態でも、初期状態であればそのまま普通に走行できます。ヘッドガスケットが抜けたからと言って、すぐに不具合が出るわけではないんですね。
しかしそのまま走行し続けて、ヘッドガスケットが抜けが重症化していくと、様々な不具合が起こることが考えられます。
- 圧縮漏れによるエンジン不調
- 冷却水減少によるオーバーヒート
このようにヘッドガスケット抜けは重大なエンジン損傷につながるので、症状が確認出来たらすぐに修理依頼をしましょう。
オーバーヒートについては以下の記事で詳しく書いております。
ヘッドガスケットが抜けたときの症状は?
ではヘッドガスケットが抜けたエンジンでは、具体的にどんな症状が出るのかを見てみよう。
エンジンの重大な損傷を防ぐためにも、ヘッドガスケット抜けの症状を把握しておこう。
冷却水が減る
リザーブタンクやラジエータ内の冷却水が減っているのに、車両に漏れた形跡がない場合はヘッドガスケット抜けを疑いたい。
ウォータージャケット(冷却水の通路)のシールが保たれないと、冷却水がシリンダー内に流れ込んでそのまま燃焼してしまいます。
その結果冷却水がどんどん減っていくわけです。
リザーブタンクの冷却水の量が減っているのは、日頃の簡易的な点検で発見できますが、リザーブタンクの冷却水の量は減らずにラジエーター内の冷却水のみ減っている場合もあるので注意が必要。
オイルの白濁
冷却水が流れ込む先がエンジンオイルの通路ならば、エンジンオイルが冷却水と混ざり白濁してしまいます。
水と油をかき混ぜると乳化するのと一緒で、冷却水とオイルが混ざると白濁します。
オイルが乳化すると本来のの役割である潤滑性能などが低下しますので、エンジン損傷につながるわけです。
定期的にエンジンオイルの量や色をレベルゲージで確認しましょう。
流水音がする
ホンダのバモスでよくある症状が「流水音がする」です。走行中に室内からチョロチョロっと水が流れる音が聞こえてきます。
これはヘッドガスケット抜けにより、未燃焼ガスがウォーターラインに入り込んでいるためでいわゆるエアがみ状態となります。
バモスはリヤエンジンなのでウォーターラインが車の前から後ろまで長く伸びているため、流水音が聞こえやすいんですね。
室内から流水音が聞こえてきたらヘッドガスケット抜けの可能性が高いです。
白煙が出る
マフラーから白煙が出るのもヘッドガスケット抜けの症状であります。
ガスケット抜けにより冷却水がシリンダー内に入りるとそのまま燃焼され、水蒸気となり白煙が出ます。
シリンダー内にたっぷりと冷却水が入っているなんてこともありますが、ウォーターハンマーになる可能性もあります。
ウォーターハンマーとは、非圧縮の水がシリンダー内に入り込み、ピストンが圧縮上死点まで上がりきらずコンロッドやクランクが損傷することです。
エンジンに深刻なダメージを与えます。
エンジン不調
また「圧縮不良」「プラグの失火」などでエンジン不調になることがあります。
プラグの失火では1気筒のみ爆発しない状態になりますので、エンジンがブルブルと安定しなくなったりします。
圧縮不良ですとパワーダウンやエンジンの始動不良なども考えられます。
またガスケット抜けからのオーバーヒートによりパワーダウンも考えられます。
ガスケット抜けの見極めは難しい
さてこれまでヘッドガスケット抜けの症状を紹介してきましたが、他の故障と重なる症状もあるためヘッドガスケット抜けと判断することが難しい場合が多いです。
ではそんな判断が難しい中でも、ヘッドガスケット抜けを見極める方法はいったいどんなものがあるでしょう?
基本的には自動車整備の内容になりますが、3つの方法をご紹介します。
- ラジエタープレッシャーテスターの使用
- 圧縮漏れの目視
- 排ガステスターを使用
ラジエタープレッシャーテスター
まずはラジエタープレッシャーテスターを利用する方法。
冷却水漏れをチェックするプレッシャーテスターを使い、冷却水路を加圧します。
車両が正常であれば加圧した圧力は保持し続けるのですが、漏れている個所があればそこから冷却水が漏れだし、加圧した圧力は下がります。
冷却水が車外に「漏れだしていないのに圧力が下がっている場合は、ヘッドガスケットが抜けている可能性が高まります。
圧縮圧力漏れを目視する
次に冷却水路のエアーを見る方法です。
冷却水のエア抜きを実施して、いつまでたってもエアーが出てくる場合はヘッドガスケット抜けを疑います。
このラジエター内の冷却水を目視する方法ですが、はっきりとエアーがわかる場合はガスケット抜けが判断できます。
しかしガスケット抜けが軽度な場合、エア噛みなのか圧力漏れなのかの判断がなかなか難しいです。
そこで確定的に判断できるのが次の応用編、排ガステスターを使う方法。
排ガステスター
冷却通路に出てくる気体がヘッドガスケット抜けによる圧縮圧力だった場合、その成分は燃焼ガスです。
それを排ガステスターで測定して燃焼ガスであればガスケット抜けと判断できます。
具体的なテスト方法ですが、まずラジエターの口にビニールを張り出てくる気体を逃さないようにします。
エンジンを回しラジエターからの気体ががある程度溜まったら、排ガステスターのプローブを差し込み数値をチェック。
測定する数値はHCです。
HCとはハイドロカーボンの略で未燃焼ガスのことです。本来冷却通路にあるはずのないHCが出ればヘッドガスケット抜けが確定します。
排ガステスターは整備工場にしかありませんが、「ヘッドガスケットリークテスター」なるものも安価で売られていますので、一般ユーザーさんでもチェックは可能です。
このヘッドガスケットリークテスターはラジエター内のCO2の有無を測定して判断しています。
気になる修理方法とその費用は?
さてヘッドガスケット抜けが確定してしまったらまずは修理となりますが、気になるのはその費用でしょう。
基本的にはヘッドガスケットの部品交換となりますが、交換にはヘッドの脱着が必要となるため交換費用は高額になります。
ヘッドガスケットの交換
ヘッドガスケットの交換にはシリンダーヘッドの脱着が必要になります。
シリンダーヘッドの脱着工程は
- タイミングベルト(チェーン)系の部品
- インテーク系の部品
- エキゾースト系部品
- タービン周りの部品
以上の脱着が必要となりかなり大掛かりです。ターボ車の場合はタービンも含みます。
工賃は高額ですし取り外す部品が多いため、消耗品とされるものはその際交換するので更に金額がかさみます。
概算ではありますが、ホンダバモスのヘッドガスケット交換をした場合のおおよその修理金額を載せておきますので参考にしてください。
作業 | 費用 |
---|---|
ガスケットのみ | 5万円 |
ガスケット+タイミングベルト | 8万円 |
ガスケット+タイミングベルト (ヘッドが歪んでいる場合) | 10万円〜 |
バモスのヘッドガスケットのみの交換費用は概算で約5万円となります。
その他タイミングベルトや水廻りの消耗品を交換する場合は、部品代と工賃がおよそ3万円前後プラスされます。
またオーバーヒートをしてしまいシリンダーヘッドにひずみなどがあった場合は、面研費用2万円前後が掛かりますが、ひずみがひどい場合はシリンダーヘッドの交換が必要となりさらに高額になってしまいます。
このように、修理の方法やエンジンの損傷具合によって費用は大きく変わってきますが、最低でも5万円前後の修理費用は必要となるため安くはありません。
添加剤の利用
修理費用が高額なので、なんとか安く修理できないかな?と思うのも理解できます。
そんな方にヘッドガスケットからの冷却水漏れ止め添加剤を紹介しておきます。
RISLONE(リスローン)のヘッドガスケットフィックスという商品です。
使用方法は冷却水に混ぜるだけという製品で、漏れている箇所に添加剤の微粒子が入り込み漏れが止まるという特徴がある。
価格はガスケット交換修理よりは安いが、添加剤としては高いです。
弊社でも在庫はしてあるのですが未だに利用しておらず「漏れが止まった」といった実績がないため、ダメ元での使用を推奨します。
お使いになってガスケット抜けの改善になった方がいらっしゃたら、コメント欄にてご連絡くださませ。
まとめ
さて今回はヘッドガスケット抜けについてお話しましたが最後にまとめてみますね。
ヘッドガスケットの役割はシリンダー内の圧縮や冷却水のシールです。しかしオーバーヒートや部品の経年劣化によりヘッドガスケットが抜けてしまうことがあります。
症状としては
- 冷却水が減る
- オイルの白濁
- 流水音がする
- 白煙が出る
- エンジン不調
などがありますが、そのまま走行すると最悪エンジン損傷になります。
そしてヘッドガスケット抜けの見極めは難しいので、自分で判断するのではなく整備工場へ持っていきプロに判断してもらいましょう。
ガスケット抜けが確定した場合は、修理するか乗り換えをするかの決断が迫られます。
ヘッドガスケットの交換費用は5〜10万円ほどが目安なうえ、今後の故障も増えていく傾向であることを考えると、乗り換えも視野に入れて検討するのがいいでしょう。
しかし突然の故障ですと、すぐに修理か乗り換えかの決断することはなかなか難しいですよね。
車検の有効期限や年式、走行距離、どのくらいで売却できるか?など様々な観点で判断してください。
このサイトでも何度も言っていますが、車の乗り換えのタイミングを間違ってしまうと、修理後にまた別の故障で修理するという負のスパイラルになってしまい、余分なお金を支払い続ける羽目になってしまいます。
ガスケットが抜けるほどの車の状態ですから、今後故障が頻発する可能性は低くはないですよね。
また何を判断材料にしたらいいかわからないという方は、故障した車を査定に出してみることをおすすめします。
でも「ガスケット抜けした車は鉄くずで買い取ってもらえる価値がないのでは?」と思っていませんか?
故障した車でも十分に買取の対象になるんですよ。
買取店側は修理して輸出したり、使える部品を販売したりいろいろな活用方法がありますし、車の程度が良ければ高額な買取も期待できます。
査定してみることで、「その金額で買い取ってもらえるなら、頭金にして買い替えよう!」って決断できるきっかけになりますよね。
最悪なのは査定せずに「本当は処分代かかるけど無料でいいよ!」とタダで車屋に渡してしまうことです。
「本来は10万円で売却できるはずが、0円で手放してしまう」そんな失敗をしないように本来の価値はどのくらいなのか査定してもらおう。
ガスケット抜けの症状が軽度なで自走可能な場合は、オークション形式のユーカーパックが高く買取してくれます。
オーバーヒート後にガスケットが抜けて、症状がひどく修理しないと自走できない場合は廃車買取専門店がおすすめ
車の故障はどこかのタイミングで必ず起きます。大きな金額がかかるときは冷静な判断をしていきましょう。