昨今、ゲリラ豪雨や台風による災害が多くなりましたよね。おかげで車が水没する被害が毎年のように起こるようになりました。
1度の災害で水没車が何百台も被害に遭うことも少なくありません。
実はそんな水没車、中古車業界では業者オークションを通して普通に中古車として流通しているのをご存じですか?
水没車であっても、再利用できる車は必要な箇所だけ修理をして、そのまま販売しているのが現実です。
水没車は時間が経過してから不具合が出てくるものもあり、とても厄介です。
そこで今回は現役の車屋が水没車の見分け方をご紹介しますので
- 中古車購入時に水没車を購入したくない!
- 車か購入後だけどこれって水没車では?
なんて思っている方は参考にしてください。
水没車とは?
まず水没車とはどんな車のことを言うのでしょう?まずは定義からご紹介します。
水没車とは車のフロアまで水が浸かった車のことを言いますが、同じような意味で冠水車と表現される場合もあります。
日本自動車査定協会では水没車を「室内フロアよりも上まで浸水した車」と定義しています。
しかし水没車でも水が浸かった程度により、エンジン不動が困難な状態の物や、簡単な修理で直るようなものもまでさまざまです。
そこで日本自動車査定協会では水没車を以下のように評価しています。
冠水 | 減点率 |
---|---|
フロアまで | 30%以内 |
クッション上部まで | 40%以内 |
ダッシュパネル上部まで | 50%以内 |
参考資料:日本自動車査定協会
業者オークションのUSSでも水没車だった場合、中古車の評価は著しく低くなります。
(2) 災害車 災害等を受けたと思われるもの,およびそれに準ずる状態で著しく商品価値の下落が見込 まれるとUSSが判断したもので,冠水歴車(災害や自らの浸水により,水または泥等に浸 かったもの,およびそれに準ずるもの),消火剤散布歴車等
引用・画像引用:USS検査規定
業者オークションのUSSでは5点満点の評価点が1となってしまします。
当然水の浸かる量が多いほど車の不具合が出る可能性は高くなりますので、中古車の査定では大きく減点され評価が低いということです。
水没車の購入を避けた方がいい3つの理由
では水没車は具体的にどのような不具合が出るのでしょう?
水没車の場合主に3つの不具合が懸念されます。
- 異臭・しみ・汚れ
- サビが出る
- 電気系統の不具合
異臭・シミ・汚れ
ゲリラ豪雨や台風などで河川が氾濫した場合などの水は、下水道から流れ出た汚水や畑などの土が混ざった汚泥などかなり不衛生です。
その汚泥や汚水が車に入るわけですから、乾いたあとでも異臭・シミ・汚れが取れないようなことが考えられます。
全てを交換するとなるとかなりの高額修理になってしまいますので現実的ではありません。故に中古車ではそのまま乾燥させて販売されているケースが多いです。
汚水などにさらされた布製の部品は、1度臭いが付いてしまうと洗浄してもなかなか臭いや汚れは取れません。
サビが出る
水没車した車はすぐに修理されることは少なく、水が引いた後になってもドアを締めっぱなしの状態で放置されることがほとんどです。
水がかかることを想定していない車内の部品は、防錆処置がほどされていませんから、高湿度な状態が長く続くと、錆が出てきます。
サビは1度出てしまうと自然に直るものではありませんし、進行するとサビが大きくなり最悪穴が空いてしまいます。
サビの修理には板金塗装が必要となり多額の修理費用がかかります。
電気系統の不具合
水没車で1番厄介なのが「電気系統の不具合」が起こることです。
昨今の車には電子制御するため、あらゆるところにコンピューターがありますが、コンピューターは水に濡れるとショートして一発で故障してしまいます。
具体的な症状としては
- エンジンがかからない
- エンジンの調子が悪い
- パワーウインドウが動かない
など軽度な故障や致命的な故障になる可能性もあり、修理は電装品の交換となるため超高額になる傾向があります。
そして厄介なのが、現在は正常に動いているという状態でいつ不具合が起きてもおかしくないという状況です。
電気機器の内部やカプラーが湿気により腐食してしまうと、腐食の進行により接触不良などを起こし電気系統の不具合が出ます。しかしそれがいつ起きるかがわからないのが厄介なところです。
水没車の見分け方
いつ故障するかわからないような水没車は、どんな理由であれ購入するべきではないと考えます。
そこで水没車を見極るポイント5つ挙げますので参考にしてください。
水没の可能性 | チェック箇所 |
---|---|
シミや汚れ | カーペット・マット・シート・シートベルト |
異臭 | エアコンを作動してチェック 芳香剤で臭いをごまかしていないか |
サビが出ているか | ドアのヒンジ・スペアタイヤハウスなど |
相場より安い | 安い理由を把握する |
詳しく説明していきますね。
シミや汚れチェック
水没車は汚水や汚泥に使っていたわけですから、シミや汚れなど以下の箇所を重点的にチェックしたい。
シミ・汚れチェック箇所と項目 | |
フロアマット・カーペット | フロアマットやカーペットはめくってみる |
シートベルト | シートベルトはすべてを引き出しす |
シート | 色々な角度からみる |
カーペットの下に泥汚れがあったり、砂が溜まってないか?
シートベルトはすべて引き出してみて、シミなどはないか?
シートは下から覗いてみたりして、シミなどはないか?
異臭がする
水没後の車はカビ臭かったり、不快になる臭いが残ったりします。室内の部品をいくら乾燥させても臭いはなかなか取れるものではありません。
車内に入った瞬間に臭いが気になるようでしたら購入はやめるべきでしょうね。
またエアコンシステムにカビが繁殖しているとカビ臭いことがありますので、エアコンを作動させて送風の臭いなども確認しましょう。
水没車の臭いを隠すために芳香剤を使用している場合があるので、芳香剤の臭いがきつい場合は要注意です。
- 車体全体に異臭はないか?芳香剤でごまかしてないか?
- シートやカーペットに異臭やカビ臭くないか?
- エアコン作動時カビ臭くないか?
サビが出ている
車両のサビチェックも水没を判断する材料になります。
ボディ全体のサビはもちろんチェックしますが以下の細かいところをチェックしたい
- シートレール
- シートベルトステー・バックルステー
- ステアリングシャフト
- 各カプラー端子
- ドア下部やヒンジ
- スペアータイヤハウス
- エンジンルーム
ドア下部やヒンジのサビチェック
シートベルトステー・バックルステー・シートレールのサビチェック
スペアタイヤハウスのチェック。スペアタイヤは取り外すとチェックしやすいです。
エンジンルームのサビチェック
しかし1つ注意点があるのですが、雪国で使われていた車の場合融雪剤の影響でボディ全体が錆びている場合があります。
サビが水没の影響なのか融雪剤の影響なのかは見極めが非常に難しいので、その他のチェック項目も合わせて総合的に判断しよう。
価格が相場より安い
最後のチェック項目ですが価格が相場より安い車は要注意です。
例えばほとんど同じ条件の中古車で一方は150万円、もう一方は130万円だとあなたはどっちを買いますか?当然後者を選択しちゃいますよね。
しかし中古車の場合、相場より安い場合は注意が必要です。
なぜらな中古車販売店の仕入れ価格は、業者オークションの相場によってある程度保たれており、相場より安いには何かしらの理由があるからです。
長期在庫になると様々な不具合が出てくるリスクのある水没車の販売は、車両本体価格を安くしてまで早くさばきたい商品。
中古車を買う立場からするとなぜ相場より安いのか?を知る必要がありますが、それを営業マンに聞くと「仕入れが安かった」などと言われごまかさせますから、ダイレクトにこれは水没車ですか?と直接聞いてみよう。
販売者は水没車の告知義務はない?
さてこれまで水没車の見極め方をお伝えしてきましたが、そもそも水没車を売りつける車屋なんて違法じゃないの?
と思われる方も居るでしょう。
実は水没車であることを告知する義務は自動車販売業にはないんです。
フレームを修理や交換したいわゆる事故車(修復歴)の有無は告知義務はあるのですが、水没車(冠水車)であることを告知する義務は無いんですね。
これは法律が追い付いていないなと感じますので、いち早く法律で義務化してほしいものです。
そして現在の法律の抜け道を突いて、水没車を安く仕入れ販売する中古車販売業者もいるんですね。
と言うのも、業者オークションでは水没した車を「冠水車(災害車)」として評価し出品しているので、冠水車と分かっていて仕入れることができます。
粗悪な中古車を購入しないよう「水没車を見極める力」をつけ防御しましょう。
水没車ではない車を購入するには
とはいえ、中古車購入時などで水没車を購入しないようにするために1番大切なことは、信頼のある中古車販売店で購入することです。
日頃から付き合いがあり信頼できる車屋さんがいれば良いのですが、そうでない場合はディーラーや大手の中古車販売店が安心でしょうね。
中古車販売業者では「ズバブーン車販売」をおすすめします。
ズバブーン車販売はウェブクルーが運営する中古車提案してくれるサービスです。
ガリバーと提携しているのですが、ガリバーの中古車は「修復歴のある車や冠水車の販売は行わない」と宣言しており中古車の品質が担保されているので安心です。
欲しい車の情報を入力すれば、ネット検索では出回らないような車を提案してくれます。いい車はこういった非公開情報の中にあるものなのです。
非公開車両って何?って方はこちらをご覧ください
購入した車が水没車だったら?
では購入した車が水没車だった場合返品や契約解除はできるのでしょうか?
中古車販売業者は契約不適合責任(瑕疵担保責任)という責任を負っていますので、水没車とは知らずに中古車を購入して、車の冠水が原因でエンジン不調となったなどの不具合が出た場合には、契約解除や返金される可能性が高いと思われる。
契約不適合責任(瑕疵担保責任)を簡単に言うと、売買後の中古車があとになって不具合が出た場合、売り主は契約解除や損害賠償の責任を負わなければならないということです。
もちろんケースバイケースなので、消費者センターや法律事務所に相談するようにしましょう。
また余談となりますが、業者間で車の売買をする「業者オークション」では、災害車(冠水車)と後でわかった場合は期間の指定はありますが契約解除ができる規定となっています。
まとめ
水没車の見分け方を中心に解説してきました。
中古車購入時や自分の車を確認する時に気にしてみてください。
おさらいすると、各部のシミや汚れ、サビや異臭をチェック。また価格が相場と比べて安すぎないかでしたね。
水没車は臭いや汚れだけではなく、電気系統の不具合がいつ起こってもおかしくないということで購入時にはさせたい物件です。
しかし中古車販売業にはその告知義務がないいわゆるグレーゾーン案件なので、水没車を売りつけるような血も涙もない中古車販売会社があるのも事実。
そもそも中古車購入時には日ごろから付き合いのある車屋さんで買うか、ディーラーや大手中古車販売店で購入するのがベター。
信頼するところから購入しましょう。