車の下回りのサビがひどいと、どこまで危険なのでしょうか。表面に出た薄いサビだけなら直ちに問題になるとは限りません。しかし、ブレーキパイプや足回り、車体の重要な部分まで腐食が進むと、事故につながる重大な故障が起こるおそれがあります。
今回紹介するのは、魚屋さんが日常的に港へ出入りする際に使っていたトヨタ・タウンエーストラック。走行距離は約5万kmですが、下回りには激しい腐食が発生していました。
この車は約1年前、ブレーキパイプが腐食で破損し、ブレーキを踏んでも効かない状態になったことがあります。当時交換したのはブレーキパイプの一部で、すべての配管ではありません。その約1年後に入庫した際、未交換部分にも腐食が見られました。今回は防錆処置を行わず、車の買い替えに至っています。
実際の車両を撮影した9枚の写真を使い、腐食の危険性、車検との関係、防錆処理と買い替えの判断について現役自動車整備士の視点で解説します。
車の下回りのサビがひどい!走行5万kmのタウンエース
- 車種:トヨタ タウンエーストラック
- 年式:平成20年10月(2008年10月)
- 型式:ABF-S402U
- 走行距離:約50,000km
- 使用状況:魚屋さんの仕事用で、日常的に港へ出入り

外観だけを見ると、下回りにこれほどサビがあるとは想像しにくい状態です。しかしリフトアップすると、足回り、配管付近、金具、車体下部など広い範囲に腐食が確認できました。

走行距離が少ないから下回りも良好とは限りません。経過年数とあわせ、潮風・塩分など使用環境による影響も考える必要があります。なお、今回の腐食の原因を塩害だけと断定することはできません。
1年前にブレーキパイプが破損!踏んでもブレーキが効かない状態に
この車両では約1年前、腐食したブレーキパイプが破損しました。実際にブレーキを踏んでも効かない状態になったという、非常に危険なトラブルです。走行中に必要な制動力が得られなければ、重大事故につながりかねません。
ブレーキパイプが破損すると何が起こる?
通常のフットブレーキは、ブレーキフルードによる油圧を利用して作動します。配管が破損してフルードが漏れると、十分な油圧が伝わらなくなり、ブレーキペダルが深く沈んだり、制動力が大きく低下したりするおそれがあります。
一般的な車には油圧系統の分割などの安全対策がありますが、それでも正常時と同じ制動力が得られるわけではありません。今回の事例では実際にブレーキが効かない状態になっています。
ブレーキの効きが悪い、ペダルが異常に沈む、ブレーキフルードが減る・漏れるといった異常がある場合は運転を続けないでください。安全な場所で停止し、整備工場やロードサービスに連絡して搬送を手配することが重要です。
前回交換していない部分にもサビが進行
約1年前の修理では、破損した部分のブレーキパイプを交換しました。ブレーキパイプを全部交換したわけではありません。そして今回の再入庫では、未交換の配管部分や固定金具の周辺に著しい腐食が確認されました。


これらの写真だけで配管内部の状態や残存強度まで判定することはできません。しかし、一度ブレーキ配管が腐食で破損した車では、交換した場所だけでなく、同じ環境にさらされている未交換部分も確認することが大切です。
写真で見るタウンエースの下回りのサビ
タイヤの内側・足回りも広範囲に腐食


足回りの部品は、車の姿勢や操縦安定性などに関わる重要な部分です。見た目にサビがあることと強度不足は同義ではありませんが、腐食による減肉、亀裂、ガタ、固定状態などは個別に点検する必要があります。
ミッション・排気系付近にもサビ


排気管などは熱や水分によってサビが発生しやすい部分ですが、今回の車両では周囲の固定金具にも腐食が見られます。支持金具が著しく傷むと、固定不良など別のトラブルにつながる可能性があります。
車体下部と配管まわりの腐食

車体下部の腐食では、表面の赤サビだけでなく、金属が薄くなっていないか、穴や亀裂がないかが重要です。すでに失われた金属の厚みや強度は、防錆塗装を上から重ねても戻りません。
車の下回りのサビはどこまでなら大丈夫?
- 薄い表面サビ:直ちに危険とは限らず、清掃や防錆の検討対象になる
- 厚いサビ・浮き・剥離:内部の減肉が疑われるため詳しい点検が必要
- ブレーキ配管・燃料配管の腐食:漏れや破損など安全面の確認が必要
- 車体構造部や重要な取付部分の穴あき・著しい減肉:強度や修理可否を慎重に判断する必要がある
「このサビは問題ない」と写真だけで判断するのは危険です。実車を点検して、部位ごとに腐食の深さや機能への影響を確認することが必要です。
下回りがサビていても車検に通る?
車の下回りにサビがあるというだけで、必ず車検不適合になるわけではありません。一方、ブレーキフルード漏れや重要部品の損傷など、保安基準に適合しない状態は修理が必要です。
また、車検に通ることは、その後の故障や腐食の進行が起こらないことを保証するものではありません。海沿いなど腐食が進みやすい環境の車両は、車検の時期以外にも適切な点検を受けたいところです。
なぜ港で使う車はサビがひどくなりやすい?
鉄などの金属は水分や酸素の影響でサビが生じます。さらに塩分が付着すると、腐食が進みやすくなります。港に出入りする車両は、潮風や海水の飛沫などの影響を受ける可能性があります。
今回のタウンエースもそうした環境で長く使われていました。ただし個別の原因は、経年劣化や過去の洗浄・防錆状況なども考慮し、塩害だけとは断定しません。
防錆処理で直せる?今回は修理ではなく車の買い替えへ
下回りのサビへの対応は、状態によって異なります。軽い表面サビなら、適切な下地処理を行い防錆塗装で進行を抑える方法が考えられます。しかし、配管や構造部分に著しい腐食があれば、部品交換や本格的な修理が必要になることもあります。
防錆処置は、腐食で失われた金属の強度を回復させるものではありません。そのため、すでに腐食が大きく進んだ車に防錆剤を塗るだけでは、安全上の問題を解決できない場合があります。
今回のタウンエースは、1年前にブレーキ配管の破損を経験しており、今回も未交換部分を含めて広い範囲に腐食が見られました。検討の結果、今回は防錆処置などを行わず、車の買い替えに至りました。
これは、サビのある車がすべて買い替えになるという意味ではありません。修理できる部分・範囲、今後の安全性、費用、車両の使用予定を含めて、個別に判断することが重要です。
下回りのサビを防ぐためにできること
- 海沿いや凍結防止剤が使われた道路を走った後は、車両の取扱説明書などに従って下回りの洗浄を検討する
- 腐食が進む前に、使用環境に合った防錆処理を整備工場で相談する
- 車検・定期点検の際は、配管や固定部も含めて下回りを確認してもらう
- ブレーキの異常や液漏れ、著しいサビの剥離などがあれば、早めに専門家へ相談する
なお、高圧洗浄では配線・ゴム部品・配管等を傷めないよう注意が必要です。すでに危険が疑われる車両については、無理に自分で確認・走行せず整備工場に相談してください。
まとめ|走行距離が少なくても下回りの腐食は危険になり得る
- 平成20年式タウンエース、走行約5万kmでも下回りの腐食は非常に進んでいた
- 約1年前にブレーキパイプが腐食で破損し、実際にブレーキが効かなくなった
- 交換していない配管部分や周辺金具にも約1年後に腐食が確認された
- 防錆処理だけで腐食した金属の強度を回復することはできない
- 今回は防錆処置を行わず、車を買い替える判断に至った
車の下回りのサビは見た目の問題だけではありません。ブレーキが効かなくなるような重大な不具合につながることもあります。特に海沿いで使用する車は、走行距離が少なくても油断せず、定期的な下回り点検をおすすめします。

